『町田さんに告白されちゃった!』
あのときの雅人は、まさに浮かれていた。町田さんが雅人に告白したことにも驚いたけれど、雅人が即答して付き合うことになったのにもそうとう驚かされた。前々から気になっていたのだと、まるで花が咲き乱れるかのような明るい笑顔でわたしに告げた。なんだ結局雅人も顔なのかと、そう悪態をつきたくなった。(もちろんそれは言わなかったけれど)
わたしの知る限り、町田さんと雅人に接点はなかった。同じクラスでもないし、隣のクラスでもない。雅人と賢が入っているサッカー部のマネージャー、なんてこともない。町田さんは確か帰宅部だ。ふたりが話している姿を見たことだって一度もない。
そんな彼女が雅人に告白した理由は、ただ、かっこよかったから、というだけだろう。
中学に入った頃の雅人は、身長も低く、顔もどちらかといえば女の子のようにかわいらしく、モテるというよりもかわいがられるような、そんな存在だった。中学二年の終わりに突然成長期が訪れて、中学三年の春にはわたしの身長を追い越した。今では一五センチ以上も差がついている。そして、女の子からの人気は、身長に比例するのだと知った。
外見が注目され始めれば、今までとなんらかわらない雅人の性格でさえもモテる要因のひとつに変わっていく。誰にでも優しく笑顔を絶やさないのは昔から変わらないというのに、まるで突然そんな性格になったかのようにみんなが「雅人くんは優しい」と言い出した。
いろんな女の子がかっこいいと言い始め、雅人に恋をし始める。賢が言うには同級生はもちろん、後輩からラブレターなんかももらったことがあるらしい。
だから、きっと町田さんも、雅人に告白したに違いない。きっと雅人のいいところなんて全然知らないんだ。わたしのほうが、雅人のことを知っている。誰よりも知っている。いいところも、悪いところも全部。
そして、わたしのことを誰よりも知っているのも、雅人だ。きっと、雅人も町田さんのことをよく知らないに違いない。だって出会ってまだ数ヶ月だ。わたしと過ごした時間に比べたらほんの一瞬だ。
そんなふたりが長続きするはずがない。
そう思っていた。
なのに、付き合いだしてからもう二ヶ月半。町田さんにとって最長記録だ。
——『俺はずっとそばにいるよ』
嘘つき。
そう、言っていたくせに。
あのときの雅人は、まさに浮かれていた。町田さんが雅人に告白したことにも驚いたけれど、雅人が即答して付き合うことになったのにもそうとう驚かされた。前々から気になっていたのだと、まるで花が咲き乱れるかのような明るい笑顔でわたしに告げた。なんだ結局雅人も顔なのかと、そう悪態をつきたくなった。(もちろんそれは言わなかったけれど)
わたしの知る限り、町田さんと雅人に接点はなかった。同じクラスでもないし、隣のクラスでもない。雅人と賢が入っているサッカー部のマネージャー、なんてこともない。町田さんは確か帰宅部だ。ふたりが話している姿を見たことだって一度もない。
そんな彼女が雅人に告白した理由は、ただ、かっこよかったから、というだけだろう。
中学に入った頃の雅人は、身長も低く、顔もどちらかといえば女の子のようにかわいらしく、モテるというよりもかわいがられるような、そんな存在だった。中学二年の終わりに突然成長期が訪れて、中学三年の春にはわたしの身長を追い越した。今では一五センチ以上も差がついている。そして、女の子からの人気は、身長に比例するのだと知った。
外見が注目され始めれば、今までとなんらかわらない雅人の性格でさえもモテる要因のひとつに変わっていく。誰にでも優しく笑顔を絶やさないのは昔から変わらないというのに、まるで突然そんな性格になったかのようにみんなが「雅人くんは優しい」と言い出した。
いろんな女の子がかっこいいと言い始め、雅人に恋をし始める。賢が言うには同級生はもちろん、後輩からラブレターなんかももらったことがあるらしい。
だから、きっと町田さんも、雅人に告白したに違いない。きっと雅人のいいところなんて全然知らないんだ。わたしのほうが、雅人のことを知っている。誰よりも知っている。いいところも、悪いところも全部。
そして、わたしのことを誰よりも知っているのも、雅人だ。きっと、雅人も町田さんのことをよく知らないに違いない。だって出会ってまだ数ヶ月だ。わたしと過ごした時間に比べたらほんの一瞬だ。
そんなふたりが長続きするはずがない。
そう思っていた。
なのに、付き合いだしてからもう二ヶ月半。町田さんにとって最長記録だ。
——『俺はずっとそばにいるよ』
嘘つき。
そう、言っていたくせに。