雅人が落ち込んでいるときは、わたしがずっと抱きしめた。

 わたしが友人とけんかしたときは、一晩中話を聞いてくれた。

 両親に怒られたときは、一緒に謝りにも行ってくれた。

 一緒にいてどれだけ幸せな気持ちにさせてくれるのか。ちょっと頑固なところも、すぐ感動して泣いちゃったり、誰にでも暖かな気持ちで接する雅人のことを、知らないくせに。少なくともわたしより知らない。

 雅人だからこそ、町田さんなんかとも付き合ったのだ。

 きっと、雅人には、わたしにはわからない町田さんのいいところを、ちゃんを見ていたからだ。

 そんな雅人が、鬱陶しいとか面倒くさいとか、思うはずがないんだ。

 そんな雅人を、誰より傷つけた町田さんを、わたしは許せない。

「事故にあったときに、雅人に嘘をついて他の男の子と一緒にいた、そんな人にわたしと雅人のことであれこれ言われたくない」
「でも……今付き合ってるのは私よ」

 その通りだ。悔しいけれど、雅人は、町田さんと付き合っている。それは、今も変わらない事実。

「別に私が誰と一緒にいたって関係ないでしょ? それでも雅人くんと付き合ってるし。何が問題なのよ」

 そんな都合のいい台詞は、聞きたくない。

 こっちの気持ちを微塵も考えない台詞だ。だからこそ、他の人と内緒で会ったりできるのかもしれない。

 ――お父さんのように。

「美輝ちゃんは、ただの幼馴染」

 わかっている。町田さんと付き合ったときから、気付いている。嫌って言うほど思い知らされている。ただの、幼馴染。わたしが雅人に抱くほどのものを、雅人はわたしには感じていない。じゃなければ、町田さんと付き合うことだって、わたしよりも町田さんを優先することだってなかった。

 そのたびに、どれだけ悔しくて悲しかったか、町田さんにわかるはずがない。

 あの約束を、信じたかった。今度こそ、本物にしたかった。

「それでも……わたしは町田さんより雅人のことを知っているし、雅人はわたしのことを誰よりも知っている」

 わたしのほうがずっと、町田さんより雅人とつながっている。

 雅人がわたしに星をモチーフにしたプレゼントをくれるたびに、それは確信に変わった。あの約束を雅人は覚えてくれている。雅人が教えてくれたのだ。死んだら星になるんだと。

 そんなの、全く信じていないし、そんな星ならなければいいとすら思っているけれど。そんなことは雅人は知らなくていい。星なんて好きでもなければ嫌いでもない。それでも、雅人がくれる星だけは、宝物だった。