それは、少なからず自分で感じていたことだ。

 雅人に抱く思いが、恋愛だとかじゃなくてただの執着心なのではないかと、気付いていた。

 ——『ずっとそばにいるよ』

 あの言葉が裏切られて、代わりに雅人が交わしてくれた約束にしがみついて過ごしてきた。

 それでも、それでも。そうじゃないと、そんなことないと、信じている。信じたい。少なくとも、雅人はわたしをそんなふうには感じていないのだと。

「お父さんが亡くなったのに、美輝は泣かなかったんだ、強いんだって雅人くんは言ってたけど、そんなの薄情なだけでしょ。それで雅人くんを縛り付けてるんだから、腹黒いのよ」

 唇に歯を立てて、彼女の言葉で泣きそうになるのを耐えた。

 こんなことで泣いてたまるか。

「しかも死んだお父さんは星になったから、星が好きって? おかしいんじゃないの。いつまでもいつまでも雅人くんを縛り付けて。誕生日も一緒に過ごすとか、なんなの? そんなに私と雅人くんを邪魔したかったの? じゃあよかったじゃない、私が事故にあって」
「なにも……知らないくせに勝手なこと言わないで」

 奥歯を噛んで怒りを孕んだ声で呟いた。

「あんたみたいな薄情者には私なんて死んだってどうでもいいでしょ? 雅人くんがまた自分のところに戻ってくると思ってるんでしょ!」
「いい加減にしてよ……!」
「一緒にいても美輝が美輝がって鬱陶しいのよ! 雅人くんは本当は面倒くさいと思ってるのよ!」
「雅人のことなにも知らないくせに、知ってるようなこと言わないで! 町田さんなんて顔だけでいろんな人と付き合って、飽きたら別れるんでしょ? そんな人が雅人のなにを知ってるの!」

 知らないくせに! 雅人がどれだけ優しいか。

 幼稚園の頃、わたしが勝手に癇癪を起こしたとき、必ず雅人が謝ってきた。雅人はなにひとつ悪くないのに。ごめんね、ごめんね、一緒に遊ぼ、と言ってわたしの手をにぎるのがいつものことだった。

 いじめっこにおもちゃを奪われたときも、ちょっと涙目になったものの怒りはしなかった。代わりにわたしが怒ってけんかをした。傷だらけのわたしを見て、女の子なのに、と泣き出した。

 誰かが失敗をして笑われていても、雅人は一緒になってからかうようなことはしなかった。

 だけど、誰よりも強い男の子だった。

 いじめられている子がいれば、どこでもすぐに手を差し伸べた。それに対して文句を言われても、関係ない、と言い切って誰かに屈することはなかった。

 わたしが落ち込んでいると、なんとか笑顔にしようと必死になった。わたしが笑うと、嬉しそうな顔でちょっと泣きそうな顔をする。どうして雅人が泣くの、とわたしが呆れるまでがお決まりのコースだった。