「これ全部雅人くんからのプレゼントでしょ。今年も探してたもの、美輝は星が好きなんだって言って」

 町田さんと今年のプレゼントを探していたことに引っかかりを抱いたものの、彼女にまでそんなふうに説明されていたことに思わず苦笑してしまった。

「雅人のくれるものなら、星でも月でも、太陽でもなんでもいいよ」
「なにそれ」
「そんなことより、町田さんいつまでここにいるの? 体に戻りなよ」

 わかりやすく話題を変える。

 町田さんは眉根を寄せたけれど、それ以上星については追求せずに「戻れたら戻ってるし」と肩をすくめた。そして、

「雅人くん、怒ってるかなあ……」

 と窓の外を眺めながら呟いた。

 一体なにに怒ると思っているのかさっぱりわからない。雅人が事故にあったことを責めるような男だと思っているのなら、町田さんは本当に雅人のことをなにもわかっていない。

「美輝ちゃんは、あのサッカー部の賢くん、だっけ? 彼とはどんな関係なの?」

 話がころころと変わっていく。

 わたしは今、そんな話していなかったんだけど。しかも賢との関係なんか聞いてどうするのか。

「ただの友だち」

 はあっと声に出して息を吐き出した。

「賢くんは雅人くんと違った意味でかっこいいよね。顔がっていうか、雰囲気が。付き合いたいとか思わないの?」
「なんでかっこいいだけで付き合いたくなるの」

 町田さんとは違う、と思わず口から出てきそうになった。

「かっこよかったら思うでしょ。私、雅人くんと付き合わなかったら、賢くんのこと好きになったかも」
「……なに、言ってるの……」
「雅人くんと別れたら、賢くんと付きあおうかなー」
「やめてよ!」

 はっとしたときにはもうすでに遅かった。

 わたしの突然の大声に、町田さんも、さすがに目を大きく見開いて驚いた顔を向けている。

「なによ、冗談じゃない」
「言っていい冗談と悪い冗談があるでしょ。……雅人と付き合っているくせに、気軽にそんなこと口にしないでよ」

 彼女の大きな瞳から視線をそらして、部屋を出て行く。

 これ以上町田さんと喋っていると、イライラして頭がパンクしてしまいそうだ。

 チーズケーキの残りの作業は、怒りでついつい音を大きくたてながらになってしまった。ボウルをどんと置いたり、オーブンのドアをバタンと閉めたり。モノに当たってしまう自分にも苛立ちが募ってしまう。