病院の駐車場は満車状態だった。中に入ると、たくさんのひとが椅子に座ってなにかを待っている。

 たくさんの人がここに用事があるんだと思うと、なんだか変な気分だ。わたしが病院にくることなんて滅多にないし、わたしの周りの友達だってこんな総合病院にほとんど用事がない。

 けれど、今この場所には、これだけの人がなんらかの用事があってここに来ている。もしかすると、ここで、今この瞬間、三年前のわたしのように突然世界が反転するような、そんな状況に陥っている人もいるのかもしれない。

 そんなことを考えると、胸がぐっと締め付けられて痛んでくる。

 受付に話をしに向かい、戻ってきた賢はなにもいわずに歩き始めた。向かっている場所が、昨日と同じだということも余計にわたしの心臓を激しく伸縮させた。

 もしも。
 もしも町田さんがいなくなってしまったら。

 そんなこと考えるなんて不謹慎だ。縁起でもない。けれど、払拭できない。

 もしも。
 そのとき、わたしはどうするんだろう。

 心をどうにか落ち着かせようと、鼻から息を吸い込んで、ゆっくりと吐き出しながら雅人の元に近づいていく。けれど、予想に反して、ついた場所は昨日とは違う階だった。それがなにを示すのかはわからない。賢に、どういうこと、と聞けばいいだけなのに、聞きたくない答えが返ってくるのが怖い。

 エレベーターを降りてまっすぐに突き進んでいくと、その先に人影が見えた。雅人と、町田さんのおばさんだ。わたしと賢の姿に気付いた雅人が「来てくれたのか」と力なく笑った。

「……え、と、大丈夫、だった?」
「うん、夜中に終わったけど、きみちゃんは、まだ眠ってる」

 そう言って、奥の扉を指さした。半透明の扉には〝集中治療室〟と書かれてある。て、ことは……とりあえず、無事ってことだよね。いや、どうなんだろう。そんなに安心は出来ないのかもしれない。

「今日も来てくれてありがとう。まだ麻酔が効いてるみたいで、ごめんね。でも、無事終わったから。そのうち……」

 おばさんが昨日よりも少し明るい声でわたしたちに呼びかける。そのうち、の言葉のあとをはっきりと口にしないところに、一抹の不安を抱いた。

 おばさんの顔色は悪く目を真っ赤に染めている。多分一睡もしていないんだろう。となりにいる雅人も同じように赤い目だ。