そのまま駅に向かい、帰宅途中の駅で降りる。

 この辺で一番賑やかな大きな町で、近くには大型のショッピングモールと映画館があり、周りには多くの店がある。まず腹ごしらえをしようとファミレスに立ち寄り、ランチを食べた。食べながら映画を選んで時間を調べる。人気のアクション映画だったからか、映画は満席だった。次の上映時間はまだ先だったので、だらだらとファミレスで過ごしてから、近くの本屋に立ち寄ったりゲームセンターで時間を潰した。

 結局映画を見終わったのは八時近くなっていた。真夏とはいえ、八時をすぎると太陽はすっかり姿を消してしまっている。

「面白かったなあ」

 見終わってすぐに、ファストフードに入って雅人がパンフレットを広げる。映画の後はいつもこのファストフード店によって感想を言い合うのがわたしたちのお決まりのコースだ。

「そうかあ? なんか予告が全部って感じじゃねえ?」

 雅人の興奮に対して、賢がズズズ、とジュースを飲みながらそっけない返事をする。

 たしかに賢の言うように、予告以上にかっこいいシーンはなかったけれど、それでもわたしは十分楽しんだ。とはいえ、雅人のようにパンフレットを買う程でもない。賢はもともとパンフレットは買わない主義だけれど、この様子だとBDも買わないだろう。

「えー、本当に? 美輝はどうだった?」
「面白かったよー」
「だよなあ!」

 わたしの返事に、雅人は満面の笑みを見せた。けれど、今度は代わりに賢が「えー」と不満そうに声を出す。

「そういや雅人、お前この前映画行くとか行ってたけど、これ観なかったんだな。なに観たの? ほか面白いのやってたっけ?」
「ああ、先週だろ? きみちゃんと行ったけど違うの観たんだよ」

 ふと疑問を口にした賢に、雅人は自然に〝きみちゃん〟と名前を出した。

 町田さんのことをそんなふうにかわいく呼んでるのを聞く度にいつも胸がずしんと重くなり、わたしの顔から笑みが消えたことが自分でも分かった。それを隠すように俯いてポテトを見つめる。そして、丁寧に一本ずつつまんで口に運んでいく。

 今のわたしは絶対ブサイクだ。そんな顔、雅人に見られたくない。っていうか賢もそんな話、今、三人でいる時にわざわざしなくていいのに。

 ああ、また思い出してしまう。いやな気持ちが体中に広がっていく。
 もっとポテトに集中しなくちゃ。