「いや、いやいやいや。ないよ! 賢はただの腐れ縁みたいなもんだから」
「必死なのがあやしいー」
ぶんぶんと頭を振って否定すると、聖子は疑わしそうにわたしを見る。ちょっと笑いを堪えるような口元を見るに、わたしをからかっているんだろう。
「だって、そんなこと初めて言われたし」
「えー? みんな知ってるよー。美輝に話す子もいるでしょ」
聖子が怪訝な顔をするので、記憶を引っ張り出してみるけれどわからない。
今まで噂になると言えば雅人とばかりだった。中学時代では夫婦だ夫婦だと散々からかわれたのは覚えている。高校では、どうだっただろう。そういえば誰かに「仲いいよね」とか「今日もデート?」といわれたことがある。
……てっきり雅人のことだとばかり思っていた。でも、もしかして賢とのことだったのだろうか。
雅人には町田さんという彼女がいるのは周知の事実だったので、みんなわたしが雅人が離れてしまったことに寂しがっていることに気付いてからかっているだけだと思っていた。
今更気付いたわたしに、周りの友だちがみんな呆れたような顔で見つめてくる。
「本当に今まで気付かなかったの? すごいね」
「……だって、そんなの想像もできなかったし」
今でも驚きでいっぱいだ。
「賢とは友だちだけど、雅人と三人でしか遊んだことないんだけどなあ」
ふたりきりになったことも、ほとんどない。雅人と町田さんが付き合ってからは、学校までの道のりをふたりで歩くことはあるけれど、真知と合流することも多い。
思い出せるのは——中学三年の一度だけだ。それも別に一緒に出かけたとかではない。たまたま、学校帰りの賢と会って途中まで並んで帰っただけ。
「好きとか、そういうのはないの?」
今日、こういう話するの二度目だなあ、と思いながら「ないなあ」と答えた。好き、ではあるけれど、それは友だちとしてのものだろう。どう線引するのかよくわからないけれど、雅人への思いとは違うことはわかる。
雅人と一緒にいる時間は、とても穏やかで心地良い。それに比べて、賢とふたりだとちょっと落ち着かない。口は悪いけれど、優しいところがあることはわかっている。だけど、やっぱり雅人とは違う。
賢はあまりにも、周りのことをよく見ている。そばにいると、わたしの気持ちまで見透かされそうだと思うときがある。
「必死なのがあやしいー」
ぶんぶんと頭を振って否定すると、聖子は疑わしそうにわたしを見る。ちょっと笑いを堪えるような口元を見るに、わたしをからかっているんだろう。
「だって、そんなこと初めて言われたし」
「えー? みんな知ってるよー。美輝に話す子もいるでしょ」
聖子が怪訝な顔をするので、記憶を引っ張り出してみるけれどわからない。
今まで噂になると言えば雅人とばかりだった。中学時代では夫婦だ夫婦だと散々からかわれたのは覚えている。高校では、どうだっただろう。そういえば誰かに「仲いいよね」とか「今日もデート?」といわれたことがある。
……てっきり雅人のことだとばかり思っていた。でも、もしかして賢とのことだったのだろうか。
雅人には町田さんという彼女がいるのは周知の事実だったので、みんなわたしが雅人が離れてしまったことに寂しがっていることに気付いてからかっているだけだと思っていた。
今更気付いたわたしに、周りの友だちがみんな呆れたような顔で見つめてくる。
「本当に今まで気付かなかったの? すごいね」
「……だって、そんなの想像もできなかったし」
今でも驚きでいっぱいだ。
「賢とは友だちだけど、雅人と三人でしか遊んだことないんだけどなあ」
ふたりきりになったことも、ほとんどない。雅人と町田さんが付き合ってからは、学校までの道のりをふたりで歩くことはあるけれど、真知と合流することも多い。
思い出せるのは——中学三年の一度だけだ。それも別に一緒に出かけたとかではない。たまたま、学校帰りの賢と会って途中まで並んで帰っただけ。
「好きとか、そういうのはないの?」
今日、こういう話するの二度目だなあ、と思いながら「ないなあ」と答えた。好き、ではあるけれど、それは友だちとしてのものだろう。どう線引するのかよくわからないけれど、雅人への思いとは違うことはわかる。
雅人と一緒にいる時間は、とても穏やかで心地良い。それに比べて、賢とふたりだとちょっと落ち着かない。口は悪いけれど、優しいところがあることはわかっている。だけど、やっぱり雅人とは違う。
賢はあまりにも、周りのことをよく見ている。そばにいると、わたしの気持ちまで見透かされそうだと思うときがある。