気持ちはわかるよ。わたしが町田さんの立場でも、きっと同じような不安を抱くだろうと思う。

 でも、わたしは町田さんじゃない。わたしは、雅人の幼馴染だから。

「町田さんがいなくなって、雅人が誰かと付き合って好きになって、ホントにそれでもいいの?」
「いやよ! そんなの……! でも……!」
「じゃあ、生きて! それでも生きて! 生きて雅人のそばにいればいいじゃない!」

 ぐいっと町田さんの制服を掴みあげた。

 今まで、一度も掴めなかった彼女の体。

「でも、でも、って、雅人がそんなことであんたのこと嫌いになるような男だと思ってんの!? 思ってるなら言ってあげる! あんたよりずっとずっと一緒にいて、ずっとずっと雅人のことを知っているわたしが教えてあげる」

 掴む手に力がこもる。

 堪えきれなくなった涙がぼろっとわたしの瞳から落ちる。


「雅人はそんな男じゃない」


 悔しいけど。死ぬほど悔しいけど。だけど雅人はそんなことで町田さんを突き放したりしない。

 絶対大事にしてくれる。きっと一緒にいてくれる。雅人は、大事な人は本当に本当に、大事にしてくれるんだ。

 約束を覚えていてくれた。わたしのそばにずっといてくれた。町田さんがわたしとの関係に嫉妬をして嫌がっていても、決してわたしを突き放したりはしなかった。

 本当はずっと、わかってた。

 変わった関係でも、約束を変わらず雅人も覚えてくれていたこと。

 だからきっと、町田さんがいなくなったら……雅人は泣くだろう。ずっと、町田さんを忘れることはないだろう。だから、わたしは雅人のために町田さんの味方にはなってやらない。町田さんがいなくちゃ、雅人は笑顔になれないんだから。

「障害が、残って……嫌われたり、しない?」
「雅人が嫌うときは、障害のせいじゃない、町田さんの性格のせいだよ。もしくは浮気したせいだよ」
「ひどいこと、言わないでよ。浮気じゃないし、雅人くんは、信じてくれるもの」

 町田さんが思わず苦笑をこぼした。

 わかってんじゃないか、とちょっとムカついてしまったけれど、それも仕方ない。そのくらいわかってくれるような人じゃないと、雅人の恋人にはふさわしくない。