「私も、死んだらきれいな星になるのかな」
「……なるわけ、ないでしょ」
「なんでよ。そんなに私のことが嫌いなの?」

 そうじゃない。大嫌いだけど、今すぐ消えて欲しいくらい大嫌いだけど、そんなのはもうどうでもいいことなんだ。

「死んだら、星になるなんてきれいごとだよ。死んだら消えるだけ」
「でも、きれいな思い出になれるでしょ」
「記憶に残ってどうしたいの? ああ、あの頃は楽しかったなあって思い出してもらいたいの?」

 あまりに馬鹿馬鹿しい発言に、鼻で笑ってしまった。

「そんな思い出になったところで、なんの生産性もないよ。結局残された人は死んだ人を置いて生きていくんだから」

 たしかに記憶はなくならない。

 記憶は思い出になって、辛かったり、悲しかったり、嬉しかったり。そんな思いが蘇る。それはそれで、きれいなことかもしれない。だけどそれだけだ。いつまでもそれにとらわれているわけにはいかない。どれだけ時間がかかろうとも、いつかはそこから抜け出さなくちゃいけない。

 死んだら、一緒に生きてはいけないのだから。

 どんなにお父さんのことを許せなくても、会いたくても、会えない。苦しくても、未練があったとしても、それは生きているわたしたちでなんとかするしかない。時々泣いたり、笑ったりしながら踏ん切りを付けて、進むしかない。そこに死んだ人間は関われない。

 わたしとお母さんが、ふたりで生きてきたこの数年間に、お父さんの存在は一切ないように。

 思い出した時間は、共に生きた証にはならない。記憶の中のお父さんは、今のお父さんじゃないのだから。思い出は思い出以上にならないんだ。

「町田さんは自らそんなものになりたいの? 雅人の思い出だけになりたいの?」
「……それでも、いいかもしれない」
「あんたがよくても、わたしが許さないんだから!」

 諦めたように笑った町田さんに、怒りが爆発してしまった。

 そんな思い出になってさせてたまるか。そんなの誰も望んでない。

「あんたが星になるっていうなら、そんなもんわたしが壊してやる!」
「は? なに言ってんの?」

 ガシャン、とフェンスを叩きつける。




「あんたが死ぬなんて一〇〇年早いのよ!」