「そうするしかないかな。順平くん間に挟むの、なんかいやだけど」

「ねえ真夏くん」


目を向けると、昴センパイがおれのことを見ていた。曲げた膝の上に頭を置いて、じっと、ちょっとだけ不安そうな顔で。

「なあに」って答えてもすぐには返事は戻ってこない。

どうしたのかなって思ったら、センパイの目がふいと別の場所を向いた。

体育座りした自分の爪先のあたり。昴センパイがよく見ているとこ。空と、反対の場所。


「あたしといて楽しい?」


言うまでは少し間があった。声も、すごく小さかった。


「どういうこと?」

「……あたしって、ほら」


でもそのあとは止まらない。昴センパイは、おれを見ないまんま。


「あたしって、あんまり喋るの得意じゃないし、真夏くんの好きな星の話にも詳しくないし、真夏くんに告白してる子たちみたいに可愛くもないしさ。そこら辺に埋もれてるその他大勢みたいなので、なんもいいとこなくて、全然、特別じゃないし」

「そんなのおれもだよ」

「真夏くんは……全然違うよ」


折りたたんだ膝に顔を埋めて、おれから、何かから、隠れるようにしながら昴センパイは言う。


「真夏くんはかっこいいし、人気者だし。なんか……きらきらしてるし。あたしとは違うよ」

「…………」

「それなのに一緒にいてくれるの、あたしは、嬉しいけど。真夏くんはこんなさ、あたしといて、楽しいのかなあって」


昴センパイの顔はもう見えない。こっちを向いてくれないから。じっとうずくまって何にも見ないようにして、自分のこと、どんどん傷つける。