「やるの? 部活」

「うん、やるよ」

「やるのか」

「うん、やるよ」


当然なのに。休み中なんていくらでも時間を気にせずできるんだから、やらないわけがないじゃない。


「昴センパイはやりたくないの?」

「そ、そんなことないけどさ」

「おれは昴センパイと一緒にやりたいな」


あ、センパイの顔が赤くなった。口もごもごさせて、目も逸らして。

昴センパイってすぐに顔に出るんだよね。ごまかしてるつもりみたいだけどすごくわかりやすい。

あとクセも多いし。昴センパイのことを見ていると、いろんなのを見つけるんだ。

照れるとすぐ前髪さわることとか、気分が上がると語尾が伸びることとか。座っているとき、よく、左の膝を触ることとか。


「でも、さ、連絡取れないじゃん。休みに入ると今みたいに手紙渡したりとかできなくなるし」


昴センパイが自分の前髪をびよんと伸ばしながら言う。


「連絡取れないと、ちょっと困らないかな。急に来れなくなったとか、時間合わせるの、大変だし」

「そうかなあ。うーん」

「高良先生に頼む?」

「んー……めんどくさいけど……」


そっかあ、そうだなあ。

おれは夏休みだからって何かが変わるわけでもないと思ってたし、むしろずっと自由で楽にできるって考えてたけど。実際これまでと変わんないくらい人と会おうとするのって、結構大変なことなんだな。

中学生の頃の夏休みは、連絡取りにくいことを理由にして人と会うのを避けてたけど。それが自分に嘘を吐いてた自分の唯一の逃げ道だったけど。

まさかこんな風に、逆のことで、悩むようになるなんて。