昴センパイへの連絡のお手紙は、授業中に下駄箱に入れるようにしている。

休み時間だと誰かに見られちゃうかもしれないから。おれと知り合いだって、人に知られることを昴センパイは嫌がる。

その理由はセンパイに教えてもらって納得した。自分でも、どれだけ目立つかは自覚しているんだ。あの頃とは違ってむしろ中途半端な友達なんていらないのに、高校生にもなると少し変わってるってくらいじゃ人は離れていかない。

面倒ってホント、いつまでもなくならないものみたい。


兄貴から貰ったメモ帳は、女の子が使うような可愛い星柄の模様が入ったやつ。おれはもっとシンプルなのでもよかったんだけど、兄貴はこういうのが好きみたいで、メモ帳ちょうだいって言ったら同じ星形のシールと一緒にこれをくれた。

特に文句はないから今もそれを使っている。小さなメモ用紙に、短いメッセージを書いて折りたたむ。


『今日はすぐに行けます』


こんなのね、書く必要はないってわかってる。でも、なんとなく毎日書きたくなって、こんなくだらない内容のお手紙を送っている。

昴センパイの下駄箱は一番上の段だ。センパイは、靴が取りにくいから嫌だって前に言っていたけれど、おれとしては入れた手紙が人に見られにくい分良い位置だと思ってる。ほんと、勝手な都合なんだけど。

だって誰にも見られずに手紙を渡すっていうのは実際結構大変だ。授業中に入れようと思うとさぼらなきゃいけないし、おれは人に見られてることが多いから、まわりに気を配らなきゃだし。

でも、昴センパイに迷惑をかけるのは嫌だから。

こんな些細な面倒だけでセンパイが毎日おれのとこに来てくれるなら、これくらいのことはいくらでもできる。