「ねえ高良センセ」
呼ぶと、順平くんが「んー?」と応える。
「なんでロクに話したこともない相手のこと、好きになれるのかな」
順平くんがお菓子をかじる音がした。おれは足元の毛布をこそこそと、お腹のあたりまで持ってくる。
「なんだよ真夏、また告白されたのか」
「うん」
「まじか、羨ましいなあ。ちょっとわけろよ」
「いいよ」
「いや、よくねーだろ」
順平くんがため息まじりに笑う。
ピっ、てエアコンから音がした。たぶん温度を少し上げたんだと思う。順平くんは、おれが暑いのも寒いのも嫌いなのを、よく知っている。
「ねえ、なんでさ、おれのことを全然知らないはずなのに、好きになんてなれるんだろ」
いつも思うんだ。
絶対に、おれがホントはどんな人なのかなんて、あの子たちはわかってないんだろうにさ。
自分の見た目が人を惹きつけるものだってことはわかってるつもり。おれはこの顔そんなに好きじゃないけど。面倒なことはあっても、よかったことは特にないから。
あの子たちは、そんなおれの顔を気に入っているだけでしょう。中身なんて何ひとつわかっちゃいないんだ。
それなのに、好きとか。あんなに顔真っ赤にしてまでさ。
よく、言えるよなあって。