夏休みまであとわずかという7月のなかば。
みんな間もなく来る夏の本番に浮足立っているけれど、当然授業はまだいつもどおりごく普通に行われていて、おれたちの時間を潰していく。
黒板のチョークの音、おじさん先生の低い声、ジワジワ鳴くセミの音。
生温い空気はその全部を絡めて体中にまとわりついて、うっとうしくて気持ち悪い。
夏は、あんまり好きじゃない。
空を見ている間は関係ないし、忘れられるけど、夏は、本当に、全然好きじゃなかったんだ。
窓の外を見ると、2年生が体育をしていた。
昴センパイのクラスだ。ドッジボールみたいだけど、あれはハンドボールなんだってこの間センパイが教えてくれた。
昴センパイはあんまり上手じゃなさそうだ。でもボールを受け取るたびに一生懸命投げているのはわかるから、適当にやっているわけじゃないみたい。
試合が終わって、コートから解散していくところで。ちょうど、昴センパイがこっちを見た。
おれはずっと見てたけど、昴センパイは今気づいたみたいでちょっと驚いた顔。手を振ってみたら慌てて目を逸らされて、代わりに近くにいた全然知らない人たちが騒ぎながら振り返していた。