「……すごい」


瞬きも忘れてあたしはそれを眺めていた。小さな部室が、一瞬でこんな、満天の星空の中になってしまうなんて。


「プラネタリウムだよ。今までの部員の作ったやつ参考にして作ってみたんだ」

「真夏くんが作ったの? すっごいね、こんなの作れるなんて……びっくりしたよ、こんな、すごいの」


椅子の上に乗せられた小さな機械。それがゆっくりと回転しながら無数の光を飛ばして、この小さな部屋を大きな宇宙に変えていた。

知らなかったよ。プラネタリウムなんて、専用の施設なんかでしか見られないものだと思ってたけど。こんなにも手軽に自分の手で作れちゃうものなんだ。

こんなにも手軽に、宇宙を味わえるんだ。


きらきら。きらきら。

手を伸ばしてみる。伸ばした自分の手の上にも、知らない星が、通り過ぎていく。


「ほらセンパイ。あれがスバルだよ。センパイの名前の星団」


真夏くんが指差した。その先に、もやもやとした星のカタマリが見えた。

ひとつ、ふたつ……むっつの小さな光の集まり。


「本物は今の時期にはまだ見えないんだけど、これならはっきり見えるよね」


スバル。

あたしの名前とおんなじ光だ。

ゆっくりと、それは天井から壁へと位置を変えて、本物の空が動くのとおんなじように徐々に高度を下げていく。

小さな夜空を巡る光。


それを追いかけた、先で。真夏くんと目が合った。

あ、と思う。

真夏くんのほっぺたの上で、スバルが、光っている。