おかげで部屋はすっかり真っ暗。ほんの少しの光も漏れない、指先だって見えない世界。目を瞑っても瞑らなくても、景色は何ひとつ変わらない。
「昴センパイは危ないからここに座ってて。あとはおれがやるからね」
「う、うん。なんか、ちょっと怖いね」
真夏くんに言われた場所で、床にぺたりと座り込んだ。あたしには今いる場所がどこかすらよくわかんないのに、真夏くんはまだ、真っ暗闇の中で何やら作業をしているらしい。
ゴト、とか、ガタ、とか、イテ、とか。目の前の黒いところから、いろんな音が聞こえてくる。
「真夏くん、大丈夫?」
「大丈夫。ちょっと待ってね。これでいけると思うから」
「でも真っ暗だよ、危ないって。電気点けようか?」
「あ、ここかな。よいしょ」
「ねえ、真夏くん」
無理しないで。そう言おうとしたのと同時だ。
カチリ。ひとつの音がして、瞬間景色が、色を変えた。
眩しさに咄嗟に目を閉じて。もう一度、開いたとき。
……数えきれない、小さな光の粒。見渡すかぎりにそれが浮かんで、瞬きながら、きらきらと、あたしの視界を流れていった。
「…………」
宇宙の中だ。そう思った。
あたしが見ていた夢とは違う、でも夢のような、それは限りない蒼の世界。
テーブルも、本棚も、壁も天井も床も。それからあたしと、真夏くんも。
全部の輪郭が無くなって、それに彩られて、景色を変えてそこにいる。
小さな空間が、広い、広い、宇宙へ。
全部がそれに呑み込まれて、星空の一部に溶けている。