中は、天井が階段に沿って斜めに切り取られた狭い空間だった。

少しホコリ臭い匂いがするのは、汚いからと言うよりは、ここに積まれたたくさんの本のせいだろう。部屋の半分を占めるテーブルのほとんどと、横に置かれた小さな棚に、天体に関する本が敷き詰められるようにして数えきれないほど置かれている。

たったひとつの窓の手前には組み立てられた望遠鏡。もう見慣れたいつものそれだ。三脚に、真夏くんのお兄さんの名前がかかれているやつ。

天井には、一面に、夜空の星と星座のポスターが貼られていた。古いのか、隅の方は何か所も破れて、テープで補強してあるのがよく目立つ。

静か過ぎて音がよく響くせいで、無意識に、呼吸を抑えてそれを見上げていた。この小さな空間がつくっている世界を、壊したくなかったからかもしれない。

なんだか、不思議な場所だな。

自分の心臓の音がいつもと少し違うリズムで、ドクドクと、鼓動を刻んでいる。


「あ、昴センパイ。もう来てたの」


ドアが開いて、真夏くんが顔を出した。

荷物を下ろすと真夏くんは机の下から木の椅子をふたつ引っ張り出して、ひとつをあたしにくれた。腰かけたのは、ふたり同時に。


「すぐわかった? ここの場所」

「ちょっと悩んだよ、こんなところに扉あるの知らなかったから。すごい本だよね、これ全部真夏くんの?」

「違うよ。おれのもどっかにあるけど、もうわかんないな。これのほとんどがこれまでの部員の人たちが集めて来たやつだから。雨の日はね、だいたいここで本読んだりして過ごしてるんだ」


あとはあれ見たりとか。真夏くんが、天井を指差しながら言う。