真夏くんが見上げた空には、よく見る顔なじみのハトが2羽。まだ空は青い。ちょっとだけ雲が出ていて、星を隠さないか心配だ。
風は生温いけど少しずつ陽射しは弱まっている。たぶん、もうすぐ日が暮れていく。
「真夏くんって、ちょっと変わってるもんね」
「そう思われてることは知ってるんだよ」
「怖くないの? 人と違うって思われること」
「昔はね、そう思われたくなくて必死で隠してたよ。なるべくまわりの人と同じになるようにってさ」
「じゃあ今は?」
「今は」
真夏くんの目があたしを見た。
少し、どきりとしたのは。その目があんまり真っ直ぐだったせいで。
ゆっくりとひとつまばたきをしてから、真夏くんはまた視線をいつものところに戻した。
ゆるゆると、湿った風が乾いた髪を撫でていく。
「今は違う。自分の大好きなこと、真っ直ぐに追いかけて見続けているつもり。そういう人に出会ったんだ。世界がきらきらして、全部が輝いてるみたいで。おれはね、ああ、これでいいんだって思って」
「…………」
「その人のしてること、おれとは全然違ったけど。でも、おれも、その人みたいな人でありたいって思ったんだよ」