放課後。
屋上へ続くドアの前に、いつもは真夏くんが待っているのに、今日は誰もいなかった。
遅くなるって書いてあったもんな、補習かな、どれくらい時間かかるんだろう。
ひとりで屋上へ出て、真ん中に仰向けで寝ころんで、今日貰った小さなメモをもう一度読み返してみる。
「今日は、遅くなります……真夏。だって」
女の子みたいな丸い文字。ささっと書いた感じじゃなく、一文字一文字丁寧に書いたような字の形だ。
なんか意外だなあ。真夏くんってこんな字を書くんだ。
いつもタメ口のくせに手紙では敬語だし。メモ書きみたいなものなのに、ちゃんと宛名と差出人も書いてるし。
つつ、と、メモの上の黒いインクを、指先で、なぞっていく。
そのとき。
──バンッ! と勢いよくドアが開いた音がした。
驚いて、慌てて体を起こして振り返ると、階段へのドアのところに息を切らした真夏くんが立っていた。
「ごめん、昴センパイ、ちょっと遅れた」
珍しく慌てた様子の真夏くんに、あたしはきょとんとして彼を見上げた。
「うん、知ってるよ。コレ読んだから」
「ああ、見てくれたんだ。なんだ、よかった」
ふう、と息を吐いた真夏くんがあたしの隣に腰かけた。いつもはさらさらと風に揺れている髪が、少しだけおでこに張りついている。あ、真夏くんもちゃんと汗掻くんだ。