「あー、暑いよー」


次の授業は外での体育だ。体操服に着替えてダラダラと昇降口までの廊下を絵奈と並んで歩いて行く。

夏が近づいてきたこの頃、気温は上がる一方だし、そのうえまだ明けきらない梅雨のせいで空気はじめっとしたまんまだし。着替えたばかりの体操服は、すでに汗で湿っている。

こんなときに外での体育は女子高生にはちょっと酷だ。みんな不満たらたらで、普段から真面目な子たちだけがいち早く準備に取り掛かっている。


「あーあ、もうやだよー。体育だるい。保健室で寝てたい」

「絵奈は部活で外慣れてるじゃん。これくらいの暑さ平気でしょ」

「部活と体育は違うって。それにハンドボールとか、あたしテニス以外の球技は好きじゃないしさあ」


気だるげに天井を仰ぎながら絵奈は言う。焼けた肌に浮かんだ汗を、首に巻いたタオルで拭いていた。


「あたしは球技好きだけどな。みんな滅多にボール回してくれないけど」

「だって昴は球技超へたくそなんだもん。あんたは運動神経いいのか悪いのかわかんないよね」


ぶふっと噴き出して笑う絵奈に、あたしは眉を寄せて睨みつける。


「……悪かったなへたくそで。あたしは楽しんでるんだからいいじゃん」

「ま、そうだよね。昴が楽しいならそれが一番だよ」

「なんかシャクゼンとしない」

「なんでよー。あたし昴がへったくそなフォームで思いきりボール投げる姿好きだよ?」

「あ、それすごい嫌味!」


あたしが怒ったって絵奈はやっぱり笑った顔で、おまけに「あ、あれ見て!」なんて突然話題を変えてくる。

絵奈が指差しているのは廊下の窓の向こう側、校舎の中庭の花壇があるほうだ。