真夏くんが指差す先。

スカートの砂を払いながら、つられるように、そこを見上げた。


黒い、真っ黒の一面の空に。

1個、2個……もっと、もっと。いくつも散らばる光の粒。


まばたきをして目を凝らすたびに、それは広い視界に入り込んで時々きらきらと瞬いて光る。


晴れた空に遮るもののない。

そこにあるのは、満天の星空。


「……すご。ここって、こんなに星見えたんだ……」

「知らなかったの? 昴センパイもこの町に住んでるのに」

「知らなかった。なんか、こんな風にちゃんと夜空見上げたの、初めてかもしんない」


きらきら。きらきら。

数えようとしたって到底かなわない無数の光が、あたしの頭上で煌めいている。

驚いた。星ってこんなにも見えるんだ。こんな街からじゃたいして星空なんて眺められないって思ってたけど。

あたしが思うよりもずっと、星はそこで、光っていた。


夢のような青から、真っ暗闇に変わった空。

その中で、小さな小さな、昼間には見えなかった宝石みたいな光が。


「あれがスピカ。その上に牛飼い座のアルクトゥールス、あっちがさそり座のアンタレスで、向こうのほうにある綺麗に見える三つの星が夏の大三角。それからあれが、北斗七星で」


くるくると向きを変えながら、真夏くんが夜空を指差していく。

あたしは必死でその指の先を追いかけるけど、一体どこを指差して何を言っているのかは全然わからない。

ただ、真夏くんと見上げる夜空に光る星を、一緒に、見ている。