目を覚ましたのは、ケータイの着信音で。

まず起きたら真っ暗だったのに驚いて、お母さんから丁度届いた「まだ帰らないの?」ってメールに驚いて、それから時計を見たら8時前になっていたことに驚いた。

すっかり夜だ。吹奏楽部の音だって、とっくに鳴りやんで聞こえなくなってる。


うそ、でしょ。もうこんな時間とか。あたしいつの間に寝ちゃってたんだろう。

もちろん、いるのはまだ屋上だ。しんと静かな校舎の上。


……あたし、まさか、こんな時間に学校の屋上にひとり取り残された?


「あ、昴センパイ、起きた?」


焦るあたしに声が届く。振り向くと、望遠鏡の横に立って、真夏くんがあたしを見下ろしていた。

あ、よかった。ひとりじゃなかった。って安心したのは一瞬だ。


「おはよう。もう夜だけど。昴センパイぐっすり寝てたね」

「ねえ、ちょっと。なんで起こしてくれなかったの」

「そろそろ起こそうと思ってたとこだったんだ。でもいいタイミングで起きたよね」

「じゃなくてさ、早く帰らなきゃ。こんな時間にここにいちゃまずいでしょ!」


大方の生徒はとっくに帰宅している時間だ。先生だって帰っている人もいるかもしれない。

なのに真夏くんは何をのん気にそんなところに突っ立ってるの。

こんな真っ暗、ここにいたって仕方ないのに。


「大丈夫だよ。運動部はまだやってるところあるし、最近は合唱部もコンクールが近いからって9時頃まで残ってるんだ。頑張るよね」

「そうかもだけど……でもさ」

「それよりも昴センパイ、見てよ」