ときどき、風に目を細める真夏くんを、あたしはじっと見ていた。
なんか、不思議なんだよな。何がなんだろ。わかんないけど。
でも、そうだ。なんかちょっと気になるんだ。なんでわざわざこんなこと言うんだろうって。
ごめんとか。迷惑になることしない、とか。
じゃあもうこれきりにしようかって、屋上に来るのやめろって、あたしにそうやって言っちゃえばいいのに。
別にあたし、いなくたって構わない人間だろうし、たまたま、高良先生にここの鍵を預けられただけで、それをきみに渡せば、あたしときみの関係は、本当に、おしまいで。
それで何かが、変わるわけでもなくて。
「真夏くんさ、なんであたしはいいの?」
振り向いた顔は、何が、とでも言いたげだった。きょとんとしていて本当に意味がわかってないっていうふうな。
ほんとになんにも意識してないのかなあ。あたしにとっては違和感たっぷりなんだけど。
こうして普通に、きみの隣にいるってことが。
「みんなには内緒にしてるのにさ、あたしに知られちゃうのはいいのかなって。あたしもほら、星のことなんて全然知らないし」
きっときみの中であたしは、その他大勢の一部と、何ら変わりないのに。
その問いかけの答えは、でも、こんなにもあっさりと返ってきた。
「昴センパイは、いいよ」
真夏くんは考えるどころか、むしろ当然のことみたいにそう答える。