「真夏くんは、自分がどれだけ目立ってるか自覚してるんだよね? だったらきみの近くにいる人もどれだけ目立つかって、わかってるはずでしょ」
「…………」
「あたし、さ。人に騒がれたりだとか、いろいろ言われたりするの、ほんとに、いやだから」
ぎゅ、と。伸ばしたふとももを隠すスカートの裾を握りしめた。
もう。あんな毎日は二度と送りたくないんだ。
知らない人からのいやな感情の視線とか、小さな声とか。見ないように、聞かないようにしたってどうしてか届いてくるから。
意識しないようにしてもできない。みんなが忘れてくれるのを待つしかない。
早く自分が、特別な人間じゃなくなるのを。
真っ暗に、本当に、置いて行かれるのを。
「そう、わかった」
真夏くんが短く答える。
「昴センパイがそう言うならそうする」
「あ、うん……ありがと。ごめん」
「謝らなくていいよ。おれのほうこそ迷惑かけてごめんなさい。昴センパイがそんなにいやがるって思わなかった」
表情は変えないまま、でも少し声を小さくして言う真夏くんに、あたしは慌てて両手を振った。
「別に、真夏くんのことがいやとかじゃないからね。これほんと、あたしのわがままで」
「うん、わかってる」
「あの、だったら、いいんだけど」
「でももう、昴センパイの迷惑になることはしないから、大丈夫」
「…………」