「でも、順平くんが顧問のおかげでここ使えてるし。ひとりでいるのも好きだし。だから、文句は言わないけど」

「他に部員いないの?」

「いないよ。おれが入ってからは、おれひとり」

「みんなさ、真夏くんは部活やってないって思ってるよ」

「内緒にしてるもん。知られると、おれ目当てで星に興味ない女の子たち入ってきちゃうから、ちょっとやだ」


今、さらっとなんか、すごいこと、言ったな。真夏くんって自分がすごくモテること、ちゃんと自覚してるんだ。当然かも、だけど。


「だからさ、昴センパイも内緒にしててね。人には言わないで」


真夏くんがくちびるの前で人差し指を立てる。その動作がいちいちかわいいから、ウッと心臓が締め付けられた。慌てて目を逸らして息を吸う。


「あの、だったら、あたしもお願いがあるんだけど」

「何?」

「あたしが、その……真夏くんと知り合ったことも、内緒にしてほしい。つまり、今日みたいに教室に来たりとか、人がいるところで話しかけたりとか、そういうのしないでほしいんだ」

「なんで?」

「なんでって」


問いかけに、逸らしていた視線をもう一度合わせた。真夏くんは不思議そうな顔をしていて、なんでそんな顔をしているのかあたしのほうこそ不思議に思う。