◇
放課後。
約束どおり、昨日と同じに屋上へ行くと、鍵が閉まっている扉の前で真夏くんがあたしを待っていた。
昨日も持っていた大きな荷物を抱えて。あたしが踊り場から顔を出すと、座っていた階段の一番上から、のそりと立ち上がった。
「昴センパイ、待ってた」
「……うん、お待たせしました」
真夏くんの横をすり抜けて、扉のドアノブに鍵を差し込む。カチンと鳴る音が開いた証拠。
これでお仕事は終了だ。そうして帰ろうとしたあたしを、どうしてか真夏くんは呼び止める。
「センパイ、一緒にやらないの?」
逆に、なぜ一緒にやるの?
「昴センパイ、ウチの部活入ったんでしょ?」
や、入った覚えはないし、そもそもウチの部活って、どの部活?
何もかもわかんないまま、なぜだかあたしはふたたび真夏くんと梅雨の屋上に立っていた。
真夏くんは大きな荷物を足元に置いて、またじっと、何もない空を見上げている。
「……何してるの?」
「空見てる」
それは、知ってるけど。
真似して見上げてみても、やっぱり空には何もない。
何か見えるかなあって、期待したわけじゃないけれど。本当になんにも見えなくって、梅雨の真っ最中のくせにじめっと晴れた青の空は、まだまだ不透明のままで、そこに何も映さない。
青。ただただその色。
遠くて、手が届かなくて。あたしには少し、眩しすぎる。