またピストルの音が聞こえた。
あたしは気づかれないように、そっと小さく息を吐く。
じめっとしけった温い風。張りつくようなそれに気持ち悪いなあと思う。
エアコンの効いた冷蔵庫みたいな部屋にいるよりも、サウナみたいなカンカン照りの下で汗を流すほうがずっと好きだけど。
暑くなればなるほどに、眩しい光を思い出すから。
できるだけ、夏の匂いは、感じたくはない。
吸い込んだ空気は、まだ水の多い梅雨の匂い。
「センパイはさ、」
宮野真夏がふいに言った。
「部活、やってないの?」
つい顔を見てしまった。宮野真夏もあたしを見ていた。
あんまりにも今の流れで、脈絡のないハナシだったから。あたしがずっとグラウンドのほう見ていたせいかもしれないけど。
頭ん中で考えてたこと、覗かれたのかなって、ちょっと、びっくりした。
「してないよ。1年生のときに辞めた」
「ふうん」
言って、失敗したって思ったのは、「なんで」って訊かれそうだったから。でも宮野真夏は特に訊いてはこなくて、相槌をひとつ打っただけだった。
最初からそんなに興味がなかったのかもしれないけれど。
じっと覗いてみた涼しげな顔に、こっちは小さな興味がわく。