「おうし座の、肩のところにあるんだ。散財星団。スバルは和名で、プレアデスって呼ばれてる」
「プレア、です?」
「うん。スバルは、青白くて、肉眼だと6個くらいしか見えないんだけど本当は120個の星が集まってて」
ここでようやくそうかと気づいた。
これってあたしの話じゃなくて、星の“スバル”の話をしてるんだ。
「ギリシャ神話のプレイアデス7姉妹の名前とかが星に付けられてるんだ。冬なんかは、アルデバランやオリオン座と一緒にすごく綺麗に見えるよ」
まだまだ星なんて見えやしないのに、まるで全部が映ってるみたいに宮野真夏の目は遠いところを見たままだ。
横顔が、少しだけ楽しそうに笑うのを見て、あ、と思う。
宮野真夏の笑顔って、そう言えばあたし、初めて見たかも。これまで何度も見かけたことあるけど、こんな顔してるのは見たことないなって、今気づいた。
あんまり笑ったりしないのかな。でも今の表情はすごく自然だ。やわらかくって。ふわっと、本当に、こぼれるみたいな。
「星、詳しいんだね」
あたしが訊くと、「好きだから」と宮野真夏は迷いなく言った。
それがあまりにも潔い答えだったから、少しだけ、心臓がぎゅってなる。
なるほどどおりで。
「そっか。好きなんだね。そっか」
どおりでね、そんなに綺麗に笑えるんだ。
自分の大好きなこと、一直線にそれだけを見られたら、きっとあたしもおんなじような顔で笑える。
顔の作りは関係ないよ。笑い方。
淀みなくって、透明で、純粋で。作ったりとかじゃなく、何を考えるんでもなく。
心の中全部があふれ出るみたいに、浮かびだす、表情。