「篠崎、昴」
答えると、宮野真夏の表情がちょっとだけ変わった。
目を見開いて、「スバル」って、少し掠れた声で呟いて。
どうかしたのかなって心配になるあたしに、恥ずかしげもなくこう言うんだ。
「とっても素敵な名前」
「え……えっ!?」
「センパイの名前、すごくいいね。羨ましい」
つい変な声を漏らしたことにも、きっと真っ赤になってる顔にも彼はお構いなしだ。
宮野真夏はきらきらした瞳であたしを見つめてから、またついと、空の上に視線を飛ばす。
「410光年」
ぽつりと宮野真夏が言う。
「えっ……と、何が?」
「おれとスバルの距離」
「は?」
えっと、何言ってんのこの子。
あたしときみの距離? うーんと、月とスッポン的な比喩でってことで、いいのかな。おまえとおれは天と地ほどの差があるぜ、みたいな。
でも、さすがにだけど……410光年ってのはちょっと言いすぎじゃないの。きみが別格みたいなのはわかるけど、いくらなんでもそんなに離れてるかなあ。
……うん、離れてるだろうな。ドコもつりあいそうなところがなくてちょっと泣ける。遠いなあ。そうだよね。
それって、どれくらい遠いんだろう。
「知ってる? センパイ」
少し温い風が吹く。宮野真夏が、近い太陽の光を全部で受けて不透明の空を見る。