まだ真夏のような蒸し暑さの残る9月。

今日は、新学期の始業式の日。


「もう夏休み終わったとか信じられないわ」


登校中、となりを歩く絵奈は何度もあくびを噛み殺しながらそう言った。

足りな過ぎでしょって。あんなに満喫してたっぽいのに。


「もっと1日中テニスしてたかったなあ。学校始まるとか、やる気なくす」

「でも次の大会も近いんでしょ?」

「まあね。気持ち切り替えて、頑張んなきゃね」


絵奈の肌は、夏休み前より日に焼けた。伸びかけた髪はばっさり切って、背負ったラケットケースも新しいものに変わった。

めいっぱい、とことん、絵奈は絵奈なりに今年の夏を過ごしていた。後悔しないようにって。

自分の大事な夢のために。


「ところで昴はどうなの? 例の部活、辞めるのやめたんでしょ。順調なの?」


絵奈が歩きながらあたしを覗いた。あたしはちょっと早歩きで、絵奈を追い越して前へ行く。


「うん、じゅんちょー」

「へえ。なんか、楽しそうだね」

「まーね」


マンホールを踏んで角を曲がる。もう学校は見えている。

空は今日も晴天だ。このままいけば、星も、見える。