くつが砂を踏む音がする。ときどき草が足をくすぐった。

真夏くんはどんどん、止まらずどこかへ進んでいる。


「ねえちょっと、真夏くん、どこ行くの?」

「学校」

「学校?」

「うん、グラウンド」


どういうこと、っていうのはもう訊かなかった。あたしは少し早足の真夏くんの背中を、足を踏み外さないようにしながら追いかけた。

たまに空を見上げた。星がたくさん光っていた。ときどき瞬いて、チカチカここを照らしている。


「昴センパイ、おれね」


真夏くんがあたしを振り向かないまま、足も止めないまま呟いた。


「おれ、中3のときに昴センパイを見たんだ。すごかったよ。目を離せなくて、いつまでだって、あのときの姿がずっと頭に残ってて。たった一瞬遠くに見ただけのあなたが、いつの間にか、おれには特別な人になってた」


丘をおりたら目の前が裏門だ。

錆びていて動かないそれは、乗り越えることは簡単だ。


「でもね、そんな人が夢を諦めて、ひとりきりで前を向けなくなっているって知ったんだ」


裏門を超えたら第2校舎の脇を抜けて、自転車置き場の横を通れば、そこが、もう、グラウンドになる。


「だから、だからね、おれが、その人の光になってあげたいと思ったんだよ」