あの頃のあたしと今のあたしを比べて、きみがどう思うのか、考えるのが怖かった。
きみが憧れてくれたのはきっと、好きなことに真っ直ぐに向かって行っていた、世界が綺麗に見えていた、どこまでも行けたあたし。
でも今のあたしは全然違うよ。夢を諦めて、ちっぽけで真っ暗な世界にうずくまることしかできない今。
きみが、あの頃のあたしに憧れていてくれるほど、今のあたしを見てどれだけ幻滅しているかって。わかっているのに知る勇気がなかった。
きみから、言われたらって。考えるだけでこんなにも、苦しくなるから。
でも。
「あたしね、真夏くんが眩しくて、羨ましかったの。自分の好きなことを今も真っ直ぐ追いかけ続けて。あたしもそうありたいけど無理だったから。
だけどね、気づいたんだ」
真夏くんはじっと黙ったままそこにいた。
あたしは、一度言葉を切って、ぎゅっと手を握り直した。
心臓は少しずつゆっくり鳴っていく。息を、吸う。
「真っ暗じゃなかった。光るものがあった、あたしの世界にも。それをもっと見たいって思った。きみと、真夏くんと」
落ちたのは、涙ひとつ。
泣くなよ、あたし。まだ伝えたいこといっぱいあるのに、こんなところで。
でも、悲しいわけじゃないのに止まらないんだ。なんでだろ、なんでこんなに出るんだろ。
「真夏くん」
ああ、今、こんなにも素直な心でいるから。
溢れてきちゃうのかな。溜めてきた、いろんなもの。
「お願い、あたしのこと、キライにならないで」