学校の裏門。そこから人通りのない細い道路を挟んだ場所に、学校の裏の丘をのぼれる少し歪な階段がある。
電灯なんてないからその先は暗い。見上げたって、何も見えない。
あたしは、スマホをぎゅっと手の中に握ったまま、その階段をのぼっていく。
【学校の裏の丘で 真夏くんとペルセウス座流星群を見る】
予定の、1時間前に鳴るように設定していたアラームは、あたしが前にきみとした約束を教えてくれていた。
この日にペルセウス座流星群が見られるから一緒に見ようって、真夏くんがあたしを誘ってくれて。忘れないようにしようってあたしはその場で予定に入れた。
夏休みの、前の日。
丘をゆっくりのぼっていく。ときどき空を見上げながら、足を止めずに、一歩一歩と。
辺りは青い草の匂いに包まれている。それからまとわりつく、真夏の生温い空気。
花火はまだ遠くで上がっていた。音のするたび一瞬空が明るくなった。
ここは静かだった。人もいなかった。
誰も来るはずなんかないところだ。何も無いこんなところ。
なのにやっぱりきみは、たったひとりでここにいる。