急に、スマホのアラーム音が鳴った。
こんな時間に何? 覚えがなくて、間違えて設定したのかもって思いながら画面を見た。
見て、止まった。なんか、まばたきとか、息とか。
代わりに頭の中はいろんなこと考えた。
いろんなこと考えたけど、浮かんだそれに映る人はだいたい一緒で。
楽しくて、温かくて、たまに笑って、横顔が綺麗で。
どうしようもなく、優しくて。
やっぱり、だめなんだなって思う。
なんにも変わってないの。あたし。
もう何も持ってなくて、どこにだって行けないはずなのに。
どうしても、その光、追いかけて行きたくなっちゃうんだよ。
きみのところまで。
「絵奈、ごめん」
何がって、絵奈は訊かなかった。あたしはスマホを握りしめたまま、絵奈と真っ直ぐ向き合った。
「ごめん、あたしちょっと用事ができた。行かなきゃ」
「うん。それって、あたしと花火見るより大事な用なの?」
「そう、部活」
「ならいってらっしゃい。がんばれ昴」
手を振る絵奈に振り返す。
花火の真っ最中の人混み、そこを掻き分けるたびにいろんな人に迷惑そうな顔をされたけれど、何度も謝りながら、でも足は止めなかった。
がんばって、あたしの足。治ってるんでしょ、走れるはずだよ。
速くなくていいんだ。ただ、約束の場所まで行ければいい。
そこできみに会えるかなんてわかんないけどさ。
やっぱりこれで終われないから。
だって、見えたんだ。あの頃よりもずっとずっと小さいけれど、でも確かな光。
真夜中で優しく導いてくれる、夜空の一等星みたいな、小さな、小さな光──