──ドオォォン

いくつも花火が上がって消える。夜の空を明るくする灯り。


見えているもの、って、なんだろう。

あたしの真っ暗な世界に、小さな世界に。何が。一体何が見える?

本当にそんなものあるのかな。だってもう消えちゃったんだよ。青い空も、眩しい光も。もう全部あのときになくなってしまったんだ。

たったそれだけだったでしょう。あたしの光はそれだけだった。


走ること。誰より速く。

そのたったひとつの大きな夢だけがあたしの全部を支えていたの。


すべてだった。他になんにもなかった。

それがなくなって、何も見えなくなって、立ち上がれなくても声も出せなくて。

世界はこれ以上広がんなくって。

光ももう、見つけられないまま──



『 昴センパイ 』



──でも。

ああ、そっか。そうだ。

ずっと、下を向いていたせいで、気づくのがこんなに遅くなったけど。


『ねえ昴センパイ』


見えていた。真っ暗になったあたしの世界に、うずくまる、あたしの真上で。


『つまづいて転んだっていいんだから、もっともっと上を見ようよ』


そう、顔を上げるだけでよかった。

勇気を出して、立ち上がって、顔を上げれば確かに、そこに。


『ほら、センパイだってもう知ってるんでしょ』


真っ暗闇の世界に光る、とても小さな、確かな光。