またひとつ大きな花火。それから息つく間もなく次々に新しいものが上がっていく。

いくつもの花火が夜空を彩る。みんな、そればっかり見ている。


「ちょっと待って昴、それ本当なの?」

「うん。絵奈、花火いっぱい上がってるよ」

「それどころじゃないっての。ねえ昴、なんでよ、せっかく始めたんでしょ。どうして辞めちゃうの」


みんなが空ばっかり見上げている中で、絵奈だけはどうしてかあたしのことを見ていた。

それどころじゃないって。絵奈、この花火すごく楽しみにしてたくせに。

それどころじゃなくないって。ほんとさ、すごくくだらないことなんだから。


「かっこ悪いよね、あたし。でもやっぱりダメみたいなんだ。ほんと、いやになるよ」


自分のこと、嫌いだったけど、ここまで嫌いになったのは初めてかもしれない。

後悔ばっかりなんだ。なんであんなこと言っちゃったんだろうとか。なんで、真夏くんと、仲良くなっちゃったんだろうとか。


そうだよ、最初から変だったじゃん。学校で一番の有名人で、人気者で、きらきらしてて、いろんな人に囲まれてる真夏くんがさ、あたしのこと見つけて特別みたいに扱ってくれて、それがおかしかったんだよ。

そんなわけないって、初めからちゃんとわかってたじゃん。

真夏くんとあたしは違うって。こんなの、本当に、奇跡みたいなもので、ほんの少しの、気まぐれみたいな時間で。


いい思い出だったって思えばいいんだよ。部活もない夏休みに、ちょっとだけだけどいつもと違う毎日過ごして、楽しい思い出になったって。

誰かに自慢なんてしないけど、自分の中でだけ大事に取っておくんだ。そういう、思い出に。