夜6時半。待ち合わせていた神社で絵奈と合流した。
あたしは可愛げのないTシャツにハーパン姿だったけど、絵奈は涼しげな朝顔柄の浴衣を着ていた。
「やっほー昴、なんか久しぶりだよね。生きてた?」
ひらひらと袖を振りながら、絵奈はカランコロンと下駄の音を響かせる。
「うん、なんとか生きてた。でも絵奈ってさ、この花火、部活の子と見に行くって言ってなかった?」
「そうなんだけど夏風邪引いちゃったらしくてさ。だから昴が来てくれてよかったよ。誘おうか迷ったんだけどね」
「え、なんで?」
「だって夜だし。昴、部活で来られないかと思って」
暑いねえと、絵奈がうちわでパタパタ顔をあおいでいる。
空は、少しずつ薄暗くなって、夜の気配を漂わせ始めている。花火の開始は午後7時。なんだかいつもとは違う真夏の雰囲気に、妙に心が落ち着かなくなる。
見上げた空に、一番星を見つけた。あの星、なんだろう。
知りたくても、答えなんて、わかんない。
神社は縁日の屋台が出ていた。花火が始まるまでの時間、あたしは絵奈とぶらぶらそこを見て回っていた。
花火鑑賞のベストスポットでもあるこの神社にはどんどん人が集まってくる。女の人は綺麗な浴衣を着ている人が多い。それを羨ましそうに見るふりをしながら、誰かを探していたのは、自分自身にも、気づかないふり。
「昴も浴衣着て来ればよかったのに」
「でも急だったしさ、それにあたしは動きやすいほうが好きだから」
「そうかなあ。まあそれって、昴らしいけど」
ヨーヨー掬いとか射的とか。上手にこなす人たちを後ろから眺めながら、少しずつ近づく始まりの気配を感じていく。
空を見上げる。さっきよりも濃くなっている。ひとつ、ふたつ、みっつ。星も、増えている。