「ねえ、真夏くんはあたしをどんな風に見てたの? ここで会って、あのときと違うあたしを見てさ。憐れんでた? ガッカリした? 嗤った?」
何言ってんだろって自分でもわかってる。そんなこと言わなくていいのに。
なのにもう止まんなくて、どんどん言葉が溢れ出す。
自分の中の汚いところと一緒に。
あたしの世界を覆ってる、真っ暗闇と、おんなじ色の、汚い、何か。
「バカみたいだったよね、もうなんにも残ってないんだもん。きみのほうがよっぽどすごいよ。情けないよね、そう思って当然だって」
そんなわけない。思うわけないじゃん、真夏くんはそんな人じゃなもん。知ってる。だけど──
「昴センパイ、おれは」
「いいよもう」
伸びてきた真夏くんの手を思わず跳ね除けていた。
くちびるを噛みながら見上げた顔に、ハッとしたときにはもう、遅かった。
悲しそうな顔で見ていた。あたしを。真夏くん。
そんな顔を見て、ようやく気づくんだ。真夏くん、あたしの側にいるとき、あんまり笑わないって思ってたけど本当はいつだって楽しそうな表情ばかりだった。
悲しいのも、辛そうなのも見たことない。
こんなにも……今にも泣いてしまいそうな顔なんて、なおさら。
「……真夏くん」
だけどそれもぼやけてすぐに見えなくなった。
ごめんなんて、今さら言えない。きっともう隣にすらいられないのに。
ねえ、だって、あたしは。
「あたしはもう、きみの憧れたあたしじゃない」