長い廊下の一番端に、4階建ての校舎を縦につなぐ階段がある。

3階の第一音楽室から聞こえる吹奏楽部の音色を追いかけて、いくつもある段を、ひとつひとつのぼっていった。

だんだんと切れる息に、本当に、体力落ちたなあと思う。


そうして吹奏楽部の演奏も追い越して最上階の4階に上がった。バラバラな楽器の音と、どこかの運動部の掛け声。それが遠くに聞こえる、とても静かな校舎の隅。

だけどまだ、階段は続いていた。普段は行かないさらにその先。

立ち入り禁止のヒモをまたいでそこへ進み、階段の行き止まりにあった、古いドアの前に立った。


ドアノブの中心には鍵穴がある。

そこに、持っていた鍵を差し込んでみると、思いがけずスムーズに奥まで入ったのに驚いた。

回すと、カチリと、音が鳴った。




空はまだ、あんなにも青をしている。

夕焼けとは違う遥かな色で、とても近くにあるような空だ。だけど、とても遠い。


屋上に来たのは初めてだった。だだっ広くて何もない。端に取り付けられた柵は、ところどころ錆びているせいで、なんとなく心許なくて、少しだけ不安になる。


手の中の鍵を見た。

コレって本当に、屋上の鍵だったんだな。まさかとは思ったけど、ほんと、びっくりした。

なんで、高良先生が屋上の鍵なんて持ってたんだろう。変なキーホルダーが付いているから、学校のじゃなくて、私物っぽいけど。


柵に止まっていたハトが空に飛んでいった。それを見送ってから、あたしは後ろを振り返る。

屋上から階段へ続くドア。大きく開いたそこは、しんと、人のいない静かさだけを滲ませている。