「でももういっぱい泣いたから落ち込むのはおしまいね。次に向けての練習、めいっぱいしないと」

「うん、まださ、これで終わりじゃないんだしね」

「そうだね、ありがと昴。あたしまだまだ頑張るよ」


絵奈が笑う。絵奈のこういう前向きなとこ、あたしすごく好きだな。

去年、あたしがケガして走れなくなってひどく落ち込んだときだって、絵奈のこういうところにすごく救われたし。

真っ直ぐに、立ち直るのは難しかったけど。でも絵奈がいなかったら、もっとひどかったと思うんだ。


「まあでもさ、これで多少は時間に余裕できるから、どこか遊びにも行こうよ」


せっかくの夏休みなんだし。絵奈が、コップに残った氷をカランとストローで転がしながら言う。


「昴どうせヒマしてるんでしょ?」

「あ、えっと……」

「何? なんか予定でもあるの?」


じっと見つめる絵奈の視線から、思わず目を逸らしてしまった。あ、まずいな、今のあやしいかも。

ちらっとだけ見てみる。ホラ、絵奈の顔超いぶかしげじゃん……。


「あのね、ごめん、ちょっと……」

「男か!? もしかして!」

「違うよ! そうじゃなくってさ」


ああ、これはやばいな。こうなるともうごまかしきれない。

予定……あるっていうかさ、なんていうか。その。