「……ナニコレ」
「昴センパイに似合うかなって思って。可愛いよ、しばらくそうしてて」
「…………」
ムッとくちびるを噛んだ。さらっとそういうこと言っちゃうのほんとやめて欲しいな。
むずむずする。胸の真ん中へん。お花の匂いはちょっと甘くて、夏の香りが色濃くする。
「ねえ昴センパイ」
真夏くんが名前を呼んだ。答えなくても振り向かなくても、お互いがそこにいることはちゃんとわかってる。
「苦しいときは助けを求めてもいいと思うんだ。誰かにでも、自分にでも。ときどきだっていいから隠さないで表に出してさ。ちゃんとわかるように、大きく、ハタ振って」
声が聴こえるのはゆるやかな風の中。あたしの体のいろんなとこ、すっと馴染んで沁みていく。
「そうしたらちゃんと見つけられるから。必ず、誰かが手をとってくれるから」
思わずあたしはくちびるを噛んだ。
泣きそうになったから慌ててまた俯いたら、案の定、ちょっと、涙が出た。
何も知らないくせに。あたしのことなんて。なんにも知らないくせに。
なのになんでそんなこと言ってくれるんだろ。
この汚い心の中、まるで全部わかってるみたいにさ。
真っ暗闇の外から、声が、するの。