ぶっと噴き出す。真夏くんはきょとんとした顔。


「やっぱり真夏くんって変だよね」

「……よく言われるのは知ってるけど、どこが変なのかはわかんないよ」

「あはは、どこがって、いろいろ変だよ。でも、すごいね」


あたしなんか、笑いを堪えすぎて、堪えれなくて、なんか、涙まで出てきちゃいそうだ。

折りたたんだ膝の中に顔を埋める。ああだめだ、面白くて泣きそうだよ、真夏くん。


『足はもう、治ってるんですよね』


そうだよ、治ってる。傷は癒えた。でもまだ痛むんだ。

ズキズキ、ズキズキ。あのときに感じていたのとは違う痛み。消えないでずっと残ってるんだよ。


広がらなくなったあたしの、真っ暗で小さな世界の中で。あのときの痛みだけ、いつまでも響いてる。


……ああ、ほんと、真夏くんがいてくれてよかったな。あたしを呼んでくれてよかった。

さっきの、あのとき。もしも真夏くんが、呼んでくれなかったら──


なんか、髪の毛に触った気がして顔を上げた。

驚いたのは真夏くんの手が目の前にあったから。真夏くんは、あたしに伸ばしていたらしい左手を引っ込めつつ、「うん」とひとりで何やら頷く。


「似合うね、昴センパイ。それってなんだっけ、名の知らぬ花だっけ」

「……何が?」


一体何の話をしているのかしら。首を傾げていると、右耳の上の変な違和感に気づいた。手を伸ばして触ってみると、お花がそこに、ささっていた。