裏門に着くと、もう真夏くんはそこにいた。でも真夏くんがいたのはこっち側じゃない。門を挟んだ向こう側だ。
うちの学校の裏は広い丘になっていて、門はその丘の下を通る狭い道路に面して作られている。その道路を使う人も、校舎の裏側であるこの辺を通る人もほとんどいないから、このあたりはいつだってとても静かだ。
「こんにちは昴センパイ。こっちに来れる?」
「う、うん。ちょっと待って」
裏門は使う人がいないから開けるときはほとんどない。滑車ももう錆びてて、開けようとしても開くのかどうか。
あたしはカバンを真夏くんに渡して、門の鍵のところに足をかけた。
「気をつけてね」
真夏くんが言う。でも大丈夫、これくらいの門を飛び越えられないほどあたしはどん臭くはないよ。
「よっと。わ、やだ、スカートに錆が付いちゃった」
「すごいね昴センパイ。軽々飛び越えられた」
「そりゃこれくらいなら余裕だよ。真夏くん、あたしそんなにお尻重く見える?」
「見えないけど、おれはおもいきり転んじゃったから」
言われてみると、たしかにズボンの膝小僧が両方とも白く汚れていた。
ついブッと噴き出してしまったのは仕方ないことでしょ。そう言えば真夏くんって、運動あんまり得意そうじゃなかったな。
「大丈夫?」
「大丈夫。痛くて泣きそうだったけど、ひとりで泣くのって寂しいから堪えた」
「うん、えらいえらい」
「じゃあ昴センパイ、行こっか」