お昼過ぎ。

帰宅する人や部活を始める人でまだ校舎が賑わっている中、人のほとんどいない階段の一番上までのぼっていく。

とんとん、ぺたぺた。最近より一層うるさくなったセミの声が閉めきられた窓を突き抜けて聞こえて、あたしのスリッパの足音と変な合奏を繰り返す。

とんとん、ぺたぺた。

屋上へ続くドアの前にはいつのものように真夏くんがいた。立ち入り禁止の札が貼られたロープをまたいで一番最後の階段をのぼりきる。それからは鍵を開けて一緒に屋上へ出るのが毎日の変わらない流れだ。

ただし今日はいつもと違った。何が違ったって真夏くんの様子だ。困ったように頭を抱えているし、何より第一声が「昴センパイ助けて」だったから。


「え、助けてって、何、どうかした?」

「ちょっと困ってるんだけど、どうしようもなくって」

「うそ、何それ何があったの、え、どうしよ!」


真夏くんがあたしに助けを求めるとか……ていうか真夏くんがこんな風に困ってるなんて珍しいし、よっぽどのことがあったのかな。

もしかしてストーカーにでも遭ってるとか? それとも彼女をとられた男に追いかけられているとか。

……どっちにしろやばいでしょ。大変だ、どうにかして守らないと!


「と、とりあえず逃げる!?」

「いや、逃げたくはないんだよね。だってちゃんと使えるようになりたいし」

「え?」

「これなんだけど」

「は?」