「誰かに用事かな?」
「いえ、なんでもないです」
私の代わりに菜々が答えてくれたけど、内村先輩の隣にいた梨花先輩が私のほうを見て笑顔を浮かべた。
「あっ!あなたたち、たまに試合の応援来てくれてる子じゃない?」
「えっ……」
梨花先輩がにこやかに話しかけてきてくれるけど、私は気付かれていたことにびっくりでそれどころじゃない。
「2年生かな?名前なんていうのー?今日も誰かの応援?」
「え、あの、その……」
「きゃー!可愛い!先輩だからってそんなに緊張しなくてもいいのに~!」
おどおどしている姿が面白いのか、梨花先輩は楽しそうに私の頭をポンポンと撫でてくる。
何なの一体この状況は!?
梨花先輩は恋敵なわけであって!どうして仲良くなろうとしてるの私!
「……う、内村先輩っ!!」
わらわらとバスケ部の人たちが集まってくる。
たまらなくなった私は思わず、一人だけ遠巻きに見ていた先輩の名前を叫んだ。
「え……?」
「練習中に申し訳ないですが!話したいことがあるので一緒に来てください!」
「え、おい、ちょっと……」
私は先輩に近づき腕をがしっと掴むと、そのまま体育館から連れ出した。慌てる先輩を無視して。
「きゃー!もしかして告白かしらー?ねぇ、どうなのー?」
「え!? えーとですね……」
ハイテンションな梨花先輩の相手を菜々ひとりに任せるのが、ちょっとだけ忍びない気持ちになった。