私が言い返すと思わなかったのか、先輩たちは一瞬ひるんだように見えた。
でもすぐに、反撃を開始する。


「偉そうなこと言ってんじゃねーよ!内村くんはね、アンタに毎日毎日付きまとわれてウンザリしてんだよ!」


グサリと、言葉が胸に刺さる。


柊先輩の気持ちは誰にもわからないから、こればっかりは何を言われても言い返せない。


「アンタなんかに付き合わされて内村くんは迷惑してんのよ!そんなことにも気付かないバカのくせに、偉そうな口きいてんじゃないわよ!バーカ!」


先輩たちの高笑いが聞こえる。


じわりと、涙が浮かんできて視界が歪み始めた。


何も言い返せなくて俯くと、さっきまで聞こえていた先輩たちの笑い声が、突然聞こえなくなった。


「……?」


後ろから誰かに両耳を塞がれているんだと理解したあと。



「泣くな。かえでちゃん」



優しく耳元で囁かれた声に、心臓が口から飛び出しそうなぐらいに跳ね上がった。



「俺は、ひとりの女の子をこんな大勢でいじめてる君たちのほうが相当なバカだと思うんだけど」



私をかばうように前に立ちはだかったその人の背中が、すごく大きく見えた。



柊……先輩……。