先輩に言われた通り、教えてもらった公式に当てはめてやってみると、わからなかったはずの問題なのに見事にするすると解けていく。
すごい……。先輩、教えるの上手なんだぁ……。
「……できました」
「見せて」
「……っ!」
柊先輩が私のほうに近寄って、ノートを覗き込む。
より一層近くなった距離に、私の心拍数はさらに上昇。心臓発作を起こしてしまいそうだ。
先輩のサラサラの髪に目を奪われていると、先輩が「よし!」と言って、私の方に顔を向けた。
「大正解だよ、かえでちゃん」
「ほ、ほんとですか!やったぁー!」
思わず勢いよく立ち上がったために、椅子が大きな音をたてて倒れる。
騒がしいなとでも言いたげな目で他の人から睨まれてしまい、私は「すいません……」と小さく謝りながら大人しく座り直した。
「はははっ!今日も元気だね、かえでちゃん」
楽しそうに笑ってくれる柊先輩。
それを見て、私も嬉しくなる。
たとえ自分が恥ずかしい思いをしても、好きな人が私のことで楽しそうにしてくれたり、笑ってくれたりしたら、それほど嬉しいことはない。
やっぱり好きな人には笑っててほしいもん。
そのためなら、バカなことでもやってのけてしまうのが恋というものだと私は思ってる。
「じゃあ、今日はそろそろ帰ろっか」
先輩の言葉に促されるように時計を見てみると、もう6時を回っていた。