「おい、この子の前でそんなハッキリ言うなよ」
私を気遣ってか、二人のやりとりを見ていた別の先輩が言った。
二人の先輩は「あ……」とつぶやいて、罰が悪そうに押し黙る。
……そんな、無駄な気遣いいらないし。
「柊先輩と梨花先輩のことは、しっかりと存じ上げておりますのでお構いなく!」
悔しいけど、柊先輩が梨花先輩のことを好きなのは事実。
でも、クラスメイトにまで知れ渡っているぐらいに二人は有名なんだと思うと、少し悲しくなってくる。わざわざ、私の前で言わなくてもいいじゃんって感じだし。
だから、ちょーっとだけ刺のある言い方になってしまった。
「それでも好きなんですから、仕方ないじゃないですか。だから、場をわきまえたうえでアタックしてるんです」
むすっと頬を膨らませ、全然関係のない人にそんなことを言ってしまった時点で、場をわきまえてるというのだろうか。
そう思って少し反省もしたけど、教室から柊先輩が出てきたのが見えて、頭の中からそんな考えは一瞬で消えた。
「柊先輩っ!」
パタパタと慌てて駆け寄り、帰ろうとする先輩を引き止めた。