「そりゃあ、つらくないなんて言ったら嘘になるよ」
「……そうですよね、すみません……」
子どもな自分がぶつけてしまった質問に今更恥ずかしくなってくる。
思わず俯くと、柊先輩の温かい手のひらが、私の頭に優しく乗せられた。
「だからこそ、かえでちゃんの気持ちが痛いほどわかるんだ」
私の頭を、先輩が優しく撫でてくれる。
西崎にされた時とは違って、一気に心拍数が上がっていく。
先輩の手から受け取った熱が、まるで一瞬にして全身を巡ったみたいに身体が熱くなる。
「かえでちゃんが俺を好きだって言ってくれて、いつかの俺みたいに振り向かせるからって宣言してくれて。すごく嬉しかったけど、応えることはできないから、これ以上君を傷つけたくなくて突き放すようなことを言ったんだ」
「柊先輩……」
「それなのに君は……。俺が思ってたよりもずっと、聞き分けのない女の子だったんだね」
「すみません……。でも、それぐらい先輩のことが好きだから……」
考えずにストレートに言うと、柊先輩は苦笑する。
また困らせてしまったけど、本当のことなんだからしょうがない。
「大丈夫です。傷つくこともいっぱいあるかもしれないけど、全部覚悟の上ですから」
にこっと笑って言うと、先輩は驚いたように目を丸くしたあと……。
「かえでちゃんにはかなわないなぁ」
そう言って、少年みたいに無邪気に笑ってくれた。