「そんな顔しないでよ、かえでちゃん。君にしてみれば、どっちかといえば好都合なんじゃないの?」


「そんなことないです。柊先輩のそんな泣きそうな顔見てるほうが……つらいですもん」


笑いながら少し意地悪なことを言う先輩だけど、今にも泣きそうな顔をしている。というか、きっと心は泣いているに違いない。


「大丈夫だよ、俺は。もう慣れたから。ていうか、梨花を好きになったのは高1の時だから、既にその時からあいつには彼氏がいたしね。告った時に、彼氏いるからってフラれて、それでも好きだから振り向かせてやるって言ったんだよ、今のかえでちゃんみたいに」


「そうだったんですか……」


「うん。まあ、相変わらず気持ちを変えられずにいるわけなんだけど」


はははと苦笑する先輩だけど、すみません、冗談だとわかってても笑えないです……。


でも、そうなのか、先輩も私と同じように報われない恋に苦しんでて。ううん、私よりつらいんだ、相手には既に恋人がいるんだから。


それでも、ずーっと想い続けてるなんて、柊先輩の一途さに言葉も出ない。


「つらくないんですか……?」


勝てっこない。そんなに強く想われてる梨花先輩に。
そう思うと悔しくて、ついこんな嫌な質問をしてしまった。つらくないはずないのに。